厚生労働省が2016年1月1日に発表した2015(平成27)年の「人口動態統計の年間推計」によれば、同年の離婚件数は約22万5000組、離婚率(人口千対)は1.80、2分20秒に1組が離婚していると推計されています。

 そんな離婚率の高さを示すように、日経DUALで行った「夫婦関係と離婚に関するアンケート」では412人中298人、つまり7割以上の人が「これまでに離婚したいと密かに考えたことがある」と回答しました。

 少なからず、離婚を考え親きょうだいや友人に相談したときに、「よく考えて、考え直して」などと説得されることでしょう。実際に、じっくり考えたほうがいいケースもありますが、今回は敢えて、「子どものための優しい離婚講座」として、実際に離婚をするにあたってのノウハウを、小杉俊介弁護士、徳原聖雨弁護士から教えてもらいました。特集第2回は、知っているようで勘違いしがちな離婚の基本から見ていきましょう。

【子どものための優しい離婚講座 特集】
第1回 読者の7割が「離婚を考えた」 夫婦の実態調査
第2回 意外と知らない離婚のイロハ 弁護士相談、調停、別居 ←今回はココ
第3回 「リコン」の三文字 パンダ親父にも意外と身近?
第4回 教えて弁護士さん「これって離婚できますか?」
第5回 親権の行方、ありがちなトラブル 養育費の現実
第6回 離婚or別居 子への影響を考えて親ができること

 特集第1回で紹介したアンケートでは、「離婚が成立するまでには、多くの場合、当事者間の膨大なエネルギーを要する」というリアルな離婚体験の数々が印象的でした。離婚経験者の8割以上が「離婚への後悔はない」と前を向いている中で、「離婚以外の方法がほかにあったのでは」と離婚への後悔を感じている声もありました。重大な決断をする前には、俯瞰した視点から冷静に自分にとって最良の判断を選択することが大切なポイント。

 小杉俊介弁護士と徳原聖雨弁護士は、日ごろから数多くの夫婦間のトラブル解決を親身になってサポートし、相談者の笑顔を取り戻すことに尽力してきた経験から、「離婚を決断する前には、将来を具体的にシミュレーションすることやできるだけ冷静・戦略的に話を進めることが重要」とアドバイス。そこで、これから離婚を考える人が、決断をする前に知っておきたい離婚の基本や誤解されがちな知識について紹介していきます。

【離婚の基本1】離婚届を自治体に提出すれば成立

 「結婚が婚姻届を自治体に提出すれば成立するように、法的には離婚届を提出すれば離婚は成立します」と小杉俊介弁護士。窓口で審査されることもないわけです。

 法務省の公式サイトで用紙をダウンロードでき、必要事項を記入し、届出人の本籍地または所在地の市役所、区役所または町村役場に提出すれば手続き終了。

【離婚の基本2】協議がダメなら調停、それでもまとまらなければ裁判へ

 小杉弁護士によれば、離婚には、大きく分けて2つの流れがあります。

(小杉弁護士の解説をもとに日経DUAL編集部が作成)
(小杉弁護士の解説をもとに日経DUAL編集部が作成)

小杉俊介弁護士
小杉俊介弁護士

 まず夫婦間の話し合いだけで離婚が成立する「協議離婚」。ただし子どもがいる場合は、協議離婚の際に父母が協議で定めるべき事項として「面会交流」と「養育費の分担」があること、これらの取り決めをするときは子の利益を最も優先して考慮しなければならないことが2011(平成23)年の民法の一部改正で明記されました。

 次に話し合いだけでは話がまとまらない場合や話し合いができない場合、家庭裁判所の「調停手続」を利用して離婚する「調停離婚」があります。

 調停では離婚後の子どもの親権者を誰にするか、親権者とならない親と子との面会交流をどうするか、養育費、離婚に際しての財産分与や年金分割の割合、慰謝料についてなどの財産に関する問題も一緒に話し合えます。

 基本的にはこの2つの流れで離婚手続きが進みます。特に日本では「調停前置」の制度があるため、離婚の裁判(離婚訴訟)をするには原則として調停の手続きを経る必要があります。ただし相手方が行方不明など調停をすることが不可能な場合、最初から裁判できるケースがあります。

<離婚届を提出する前に決める主な内容>
□財産分与
□面会交流
□親権者・監護者
□養育費
□慰謝料(相手の非が認められる場合)
□年金分割の割合

 また、離婚後の名字については、「妻の氏は自動的に旧姓に戻りますが、子も旧姓に変える場合は、家庭裁判所の手続きにより変更可能です」と小杉弁護士。熟年離婚など、妻が旧姓に戻さずに婚氏を続称したい場合にも、家庭裁判所の手続きが必要になります。

 次からは、離婚に関する様々な手続きや誤解、対策について、詳しく見ていきましょう。

【次のページからの内容】
・離婚・離婚後に必要な主な手続き一覧リスト
・意外と知らない離婚のイロハ、勘違い
・調停申し立ての段階で弁護士に依頼するのは早い?
・弁護士に相談=高額な費用がかかる?
・離婚事由として認められる項目を押さえる
・離婚したければ別居をスタート
・弁護士に相談する前に用意するべきもの