「女の38度線」といわれる37~38歳に老いを感じケアを始めるのでは遅い
お肌はシミやしわなどのエイジング対策を行っているけれど、髪に対しては特別なケアを行っていない、というママは多いでしょう。なぜなら、パッと鏡を見ればトラブルが分かるお肌と違い、髪は抜けてきた、薄くなったなどのSOSサインが出るのはかなり症状が進んだ段階だから。早期にケアしようとなかなか思えないのは当然かもしれません。
ところが、ヘアケアとスカルプケアに特化したサロン「サロン・ド・リジュー」を主宰する毛髪診断士の永本玲英子さんは警鐘を鳴らします。
「髪は若さのバロメーターであり、心身の健康や生活の質を表すもの。髪に対して何もしないでおくと、当然日一日と老いていきます。しかも、髪は一度ひどくなってしまうと改善するのに時間がかかります“女の38度線”といういい方があるように、37~38歳は様々な部位で最初に老いを現実的に感じる年齢。30代を越えたくらいだと、老いていくという実感がないかもしれませんが、体に現れる年齢的な変化や出産を経験する40代を目前にしたあたりで、自分も老いていくのだと感じてケアを始める人は多いです。が、すでに黄色信号の場合も。3年後、5年後、10年後も美しくて健康な髪を保ちたいのであれば、今すぐにケアを始めるべきなんです」
まずは正しい情報を入手し、髪が発毛し老化するメカニズムを知ることが大切。そのうえでどんなケアが必要なのかを見極め、続けていくのがよさそうです。20代のころと同じケアを続けるのでは、髪質は衰えていく一方なのです。
髪は死んだ細胞ではない!発毛のメカニズムとヘアサイクル
「爪と同じで髪は死んだ細胞だからケアしても回復しない、というのは間違いです」と永本さん。
なぜなら毛髪は頭皮から外に出ている毛幹の部分と、頭皮の内側に潜っている毛根から構成されます。毛根部の毛球にある毛乳頭が毛細血管から運ばれてきた酸素や栄養素を取り込み、毛母細胞の分裂を促すことで、毛根から押し上げられるようにして毛髪が成長します。
「つまり、毛幹部は死んだ細胞ですが、毛母細胞などがある毛球部は生きています。だからこそ、新しい髪が生えてくるのです。一概に髪は死んだ細胞とはいえないんです」
そこで重要になってくるのが、髪の毛が伸び、成長した後、自然に抜けて、再び同じ毛穴から新しい髪が生えてくるというヘアサイクル(毛周期)です。
「ヘアサイクルは、髪が伸びていく成長期、細胞分裂が減少する退行期、完全に毛母細胞の分裂が止まる休止期の3つに分かれます。通常2~7年でこの周期は繰り返されます。ヘアサイクルが乱れ、成長期が短く十分に成長しないまま休止期へ移行してしまったり、休止期が延びてしまったりするのが、薄毛の始まりです」
今、生えている髪の毛のお手入れも大切ですが、むしろ、次に生えこれから育っていく髪にアプローチする意識が重要だといえるでしょう。それはイコール、「頭皮のケア」です。
「薄毛、白髪、ハリ・コシのなさ、うねり、パサつきといったエイジングの悩みはすべて、頭皮の血流量の低下が原因。頭皮の環境を整え、髪の毛にきちんと栄養が行きわたるように血行を良くすることで、健康的な発毛とヘアサイクルを促すことができます」
次ページからは、白髪、薄毛・抜け毛、うねり、弱コシなどの原因を探ります。また、これらの解決に向けた最新のアプローチ法や、「白髪は抜かないほうがいい」「薄毛・抜け毛は遺伝する」などとまことしやかにちまたに流れる「髪の通説」について、専門家の取材を基に真相を明らかにしていきます。