「なぜママにおちんちんがない?」は子どもの興味や理解度を知るチャンス!
いきなり私事になりますが、保育園に通う3歳の息子にある日、「ママのおちんちんはどこ?」と聞かれました。最初は笑って「ないよー。ママにはないんだよ」と答えていましたが、不思議そうに「ママは、おちんちんないの?」「パパはあるの?」と何度も形を変えて不思議そうに聞いてくるので、「そうだよ。ママにはないんだよ。パパと、キミにはあるんだよ。男の人には、あるんだよ」と答えたところ、「ふーん…」と解せない顔をしたまま、その話は立ち消えになりました。
本当に、子どもの質問は突然です。準備不足だったか…などと落ち込む暇さえありません。でも性に関するこうした質問をされたときこそがチャンスだとNPO法人ぷれいす東京理事で日本性教育協会副委員長も務める池上千寿子さんは言います。
「“おちんちんがないのはなぜ”と聞いていても、何が聞きたいかはその時々で違うもの。まずは何を聞きたいかを知る必要があります。だから聞かれたら“そうだね、ないんだよ。でも、どうしてママにおちんちんがないって分かったの?”と逆に聞いてみて、その子がどこまで分かっているのか、どんなきっかけでそう聞いたのかを理解するといいですよ」
もしかしたら、お友達との会話の中で「なんで○○くんにはあるのに、××ちゃんにはないの?」といったようなやり取りがあったのかもしれません。あるいは単にママとお風呂に入るときに、違いを見つけたのかもしれません。いずれにしても、体の仕組みは基本的に誰もが同じですが、男女で違うということは幼児期から徐々に分かっていくものです。
そして違っているということに対し、「質問せずにいられない子もいれば、のぞいて確かめなければ気が済まない子もいます。違うと聞いたら確かめたくなるのは当たり前だから、うちの子は関心が高過ぎる! などと悩む必要はありません。また全く気にならない子もいるので、無関心であってもおかしくないんですよ」と、池上さんはアドバイス。では、実際に子どもからなぜママにおちんちんはないのか、なぜ男女の体は違うのかと質問されたとき、どう答えたらいいのでしょうか。
池上さんの著書、『性について語ろう』(岩波ブックレットNo.872)によれば、妊娠8週以内では性器に性別はなく、内性器も外性器も同じ仕組みです。それが妊娠9週ころから、発育の過程でY染色体を持っているかにより、外性器の発育が分かれます。具体的には同じ作りだった性器がそのまま発達すると卵巣、卵管、子宮、膣などの女性器ができ、Y染色体を持っていると卵巣ではなく精巣が作られる。女児ではクリトリスや外尿道口になる部分が伸びてきてペニスになり、おしっこが出るように出口ができるわけです。つまり、性分化によって違いができてくるわけですが、それを詳しく理解する必要はありません。
つまり「見た目は違うけど、男の人(男児)の性器と女の人(女児)の性器は、もともとは同じ仕組みだよ、と答えてあげればいい」(池上さん)のです。
次のページからは、子どもにありがちな具体的な質問への対応や、読者アンケートや編集部員の会話からも出てきた、幼児期から小学校低学年の男児にたまに見られる「子どもが性器をしょっちゅういじっている、触っている」行為について。引き続き、大葉さんと池上さんから掘り下げて教えてもらいます。