待機児童問題が深刻化する中、「妊娠中から必死に保活をする」という夫婦も増えています。ただし、残念ながら、その結果わが子をなんとか保育園に入れることができたとしても、「ああ、よかった」とは安心できないのが実情のようです。待機児童問題に加え、保育の場が安全で安心であるかどうか。今、その「保育の質」が問われています。

この特集では「保育園の質」について、読者へのアンケートや労働経済ジャーナリストとして女性の就労問題にも取り組んでいる小林美希さんへの取材、現場のリアルを知る保育士座談会、そして保育園での“事故”で息子を亡くした親としての実体験などを交え、考えていきます。

第1回は保育園や幼稚園に子どもを通わせているママ・パパを対象に『「保育園の人員不足と質」に関するアンケート』を実施。毎日接する保育士の姿や、保育園の運営に対する保護者の不安について答えていただき、どんな点を改善していけばいいのかを尋ねました。

【「今、保育園が危ない」特集】
第1回 「園の運営に対して不安に感じる」親は50.8% ←今回はココ
第2回 「保育の質」は下降する!? 今、親にできること
第3回 保育の質を改善するには、親達の「つぶやき」が必須
第4回 保育園“モンペ”にならない上手なクレーム術とは
第5回 現役保育士の座談会「保護者には何でも言ってほしい」
第6回 公立園と民間園では雲泥の差。厳しい「保育士事情」
第7回 わが子を保育園で亡くした夫婦 事故防止策を作成

【アンケート概要】日経DUALの読者を対象に日経DUALでは2016年5月9日~5月23日にインターネット上で実施。456人(女性418人、男性38人)の回答を得た。回答者の平均年齢は34.8歳。家庭内の子どもの人数は1人が54.6%、2人が37.1%、3人が6.6%、4人以上が1.3%、0人が0.4%だった。2016年4月1日時点での子どもの満年齢は0歳児69人、1歳児113人、2歳児119人、3歳児101人、4歳児86人、5歳児68人となっている。(注)記事中のグラフの数値で合計100にならないのは複数回答可のため。

約8割が認可保育園を利用

 ここでは456人(女性91.7%、男性8.3%)の回答から、読者の保育園体験の実態をお伝えする。

 まず、保育園の実態を知るうえで、回答者が利用する保育施設について見ていこう。

 「どんな施設に子どもを通わせているか」という問いに対しては、77.4%が認可保育園と、圧倒的に認可保育園の利用者が多い。

 比較データとしては厚生労働省による『保育所等関連状況取りまとめ(平成27年4月1日)』が参考になる。このデータでは「保育所等定員(保育所および幼保連携認定こども園の定員)は約247万人」で、そのうち「保育所等を利用する児童の数は約233万人」となっており、保育施設に通う子どもの約9割が認可保育園を利用していることになる。この差は、厚労省のデータが全国区なのに対し、DUALの回答者が都市部に多いことが関係していると考えられる。

 なおその他の回答として、認可外企業内保育所、インターナショナル・プリスクールなどもあった。

 また保育施設の運営傾向を見ると、子どもが通う保育施設の傾向では、この数年の動きを反映し、認可保育園、認定こども園、幼稚園、小規模保育はすべて私立の運営による施設が多かった。中でも社会福祉法人による運営が多く、株式会社が増えていることも感じられた。特に預かり保育を実施する幼稚園では私立のほうが圧倒的に多かった。

 認可外の保育施設利用者では、東京都の認証保育所利用者が圧倒的に多く、6割を超えた。私立の認可外保育園についても24.6%となっている。その他の回答には川崎市認定保育園、区立保育室、さいたま市認証保育園、横浜保育室、私立の認証保育園(神奈川)が挙げられた。