コーヒーとチョコが大好きで、外食中心だった料理研究家の伊藤ミホさんですが、結婚6年目にして奇跡的に授かった長男の誕生を機に、持ち前の探求心に火が付きます。様々な食べ物にアレルギーがあった子どもが食べられる物を探して、腸内細菌について、大根の種類について、郷土料理について、深く研究を重ねていきます。誰が食べてもおいしいおやつ作りもその延長にありました。
 前回の記事で紹介した粉寒天入り米粉クッキーのマシュマロサンドは、食べ始めると止まらないサクサク感でした。今回は一転、ふんわりしっとりのマドレーヌ。伊藤さんのレシピですからもちろん、食物繊維や高い栄養価も期待できます。

食べ過ぎても「こら!」と叱らずに済む

オレンジジュースの効果できれいな焼き色に仕上がったマドレーヌ
オレンジジュースの効果できれいな焼き色に仕上がったマドレーヌ

日経DUAL編集部 今回はマドレーヌということですが、伊藤さんが手にしているのは市販の煮豆パック?

伊藤ミホさん(以下、敬称略) そうです。この煮豆をブレンダーでペーストにします。これは、食物繊維を増やしたいからなんです。煮豆を食べさせると、息子も娘も「口に残った」と言って皮を出したがるんです。でもペーストにしてコロコロに丸めてあげると2人ともコロッとだまされて(笑)、「おいしいおいしい」とペロリと食べてしまう。そこに目を付けました。

 基本的に、私のおやつの材料はごはんの代わりにしてもいいものばかり。米粉や野菜、豆ですので、多少おやつを食べ過ぎちゃって「もうごはん食べられない」と子どもが言っても、「こら!」と叱らないで済みますよ。

 このマドレーヌには、ホワイトソルガムという雑穀も使います。ミネラルが豊富で、栄養バランスがいい。米粉だけでもしっとりと焼き上がりますが、ホワイトソルガムを混ぜると雑穀のクセがナッツ風の味わいになり、米粉の甘い味に深みが出て、なおかつ栄養価も高まります。

―― 前回の米粉クッキーはメープルシロップを使いましたが、今回はハチミツで甘みをつけるのですね。

伊藤 はい、ハチミツは保湿成分もあるので、油の使用量を減らせます。健康効果がうたわれるハチミツですが、ただ、どんなハチミツでもいいというわけではありませんので気をつけたいところです。ミツを集めさせるために砂糖水をまいたり、農薬を使っている花畑で集めさせたり、そもそもミツバチは病気になりやすいので抗生物質を使っていたりということがあるんです。一番安心なのは、養蜂家の方に聞くことだと思いますよ。

 今回は膨らませるために、重曹を使います。重曹は酸性のものがないと膨らまないので、オレンジジュースを入れます。オレンジジュースには焼き色を良くするという効果もあるんです。米粉と重曹だけで焼くとどうしても色が白っぽいままで、おいしそうではないから。

 材料を全部よく混ぜると、ちょっとぽってりとした生地になります。卵が入っていませんから、ふわっとした生地ではありません。これを薄く油を塗っておいたマドレーヌの型に流し入れます。そして手を水でぬらして、表面を整えてから、170℃に温めておいたオーブンで17分焼きます。

―― 次ページでレシピを紹介します。