夫婦共に働きながら、子どもを海外の大学へ入学・卒業させる―。日本の従来型教育にとらわれず、グローバルな世界で通用する教育を子どもに受けさせたいと考え、実践する人が増えています。そんな中で注目を集めているのが、アメリカのスタンフォード大学に3人の息子を入れたアグネス・チャンさんの教育法。歌手・タレントとして活躍しながら、自身も3歳の子どもを連れてスタンフォード大学(博士課程)で学んだ経験があり、キャリアを積みながら子育てをする働くママの先駆け的存在です。

 英タイムズ・ハイヤー・エデュケーション「世界大学ランキング2015-2016」によると、東京大学は世界で43位なのに対して、スタンフォード大学は3位にランクイン。アグネスさんはどんな教育方法で3人をスタンフォード大学に合格させたのか? 気になる教育法とDUALライフを日経DUAL羽生祥子編集長が直撃しました。子どもの教育はもちろん、食や美容、性教育まで、幅広い知識と自分の考えをしっかり持ち、笑顔とユーモアを決して忘れない。とってもチャーミングなアグネスさんから、たくさんの前向きな刺激がもらえます! 

<プロフィール>
1955年香港生まれ。1972年に『ひなげしの花』で日本の歌手デビュー。上智大学国際学部を経てトロント大学(カナダ)へ編入学、社会児童心理学を学ぶ。1985年結婚。1989年9月、当時3歳の長男・和平さんを連れてスタンフォード大学に留学、同年11月に二男・昇平さん出産。1992年6月スタンフォード大学大学院教育学博士課程を修了。1994年に博士号が授与された。1996年香港にて三男・協平さん誕生。現在は芸能活動のほかエッセイスト、日本ユニセフ協会大使、ユニセフ・アジア親善大使、香港浸会大学特別教授など、世界を舞台に幅広く活躍している。

羽生編集長  日本の働く親達はこれまで「仕事と家庭のどちらを選ぶのか」という二択を迫られてきました。そういった中でもアグネスさんのような働くママが、日本の慣習を新しいアイデアで切り開いてくださったおかげで、今、私達も働きながら子どもを育てるということを前向きにやってこられたのだと思います。

 現在、上のお子さん2人がスタンフォード大学を卒業しており、末のお子さんが在学中。アグネスさんの新著『スタンフォード大に三人の息子を合格させた50の教育法』(朝日新聞出版刊)の中では、第1章からズバリ“教育ママ宣言”とありますが、日本では「うちなんて全然」と謙遜する家庭が主流です。「教育ママとは言われたくない」という日本特有の雰囲気をどう考えますか?

【主な内容】
●日本人は「教育ママ」であることを隠さないで。世界でも高評価
●“チャイルド・ファースト”を夫婦で考え、インター校を選んだ
●中国人、韓国人のほうが入学に熱心。スタンフォード日本人枠は空席
●「7帝大、12大、新卒入社」なんてスケールが小さい
●子どもの夢の幅を狭めているのは、親の想像力の乏しさ

学校に通って教育が受けられること自体が「恵み」

アグネス・チャンさん(以下、アグネス) 日本では「教育を受けられるのは当たり前」で、競争心をたくさん持っている人にはネガティブなイメージがあると思うんです。でも、世界中には教育を受けられない子ども達もたくさんいて、教育を受けられること自体が「恵み」。義務教育がある日本はせっかく学校で教育が受けられる環境にあるんですから、ぜひ皆さんも恥ずかしがらずに「私は教育熱心なんだ」とお互いに誇りに思うくらいでいいんじゃないかと思いますね。

アグネスさんの自宅兼オフィスでインタビュー。「教育に熱心なママであることは誇り。自分の子どもの可能性を120%伸ばしたいという欲望を肯定的に持ってほしいです」
アグネスさんの自宅兼オフィスでインタビュー。「教育に熱心なママであることは誇り。自分の子どもの可能性を120%伸ばしたいという欲望を肯定的に持ってほしいです」

 水もなく食べ物もないアフリカの国を訪れたとき、「今、何が一番ほしい?」と親達に聞くと、 5人のうち4人は「うちの子を学校に行かせてください」と言いました。彼らは教育は子どもの将来への鍵だと考えているので、「今日食べるものよりも20年先にわが子が今と同じような状況にならないように」と願うんです。日本の大学はお金がかかりますが、アメリカに比べるとまだ安いほう。無償の奨学金もある社会ですから、ぜひやる気を起こしてありがたく教育を受けましょう。私は皆さんに「教育ママ宣言」をしてほしいです。

―― 日本のママって、海外ではどんなイメージを持たれているのでしょうか。