統計データを使って、子育てや教育にまつわる「DUALな疑問」に答える本連載。小学生の暴力が取り沙汰されるようになりました。今回は、この暴力行為について、統計データを読み解いていきます。この8年での小学1年生の暴力件数の増加率が気になるところですが、その要因についても研究が進められているようです。

1980年代初頭、尾崎豊の『卒業』の世界はリアルだった

 こんにちは。教育社会学者の舞田敏彦です。今回は、子どもの暴力行為のお話です。学校で荒れ狂う子どもは、いつの時代でも教師の悩みの種ですが、2014年度の小・中・高校における暴力行為の発生件数は5万4246件と報告されています。1日あたり約150件。結構な数ですね。

 しかし、昔はもっとスゴかったでしょう。全国的に校内暴力の嵐が吹き荒れたのは1980年代初頭、『3年B組金八先生』の第1シリーズが放映されていたころです。当時の発生件数は現在の比ではなかったと思われます。故・尾崎豊さんの1985年の名曲『卒業』では、「夜の校舎 窓ガラス壊してまわった~♪」と歌われていますが、当時は、それはフィクションではなくノン・フィクション(リアル)でした。

 暴力行為は長期統計がないので、変化を可視化することはできませんが、当時と比べて鎮静化していることは確かでしょう。非行少年の数がピーク時(1983年)に比して、5分の1ほどに減っていることからも、それはうかがえます第29回の記事を参照)。何度も言いますが、今の子どもはずいぶんおとなしいものです。

小学校1年生の暴力件数、8年で5倍以上に増加

 しかるに、最近の統計を見ていて気になることがあります。図1は、ここ数年における暴力行為の発生件数の推移です。

 どの年でも反抗期の中学校で最も多くなっていますが、2013年度になって小学校と高等学校が逆転しています。近年では、体の小さな小学生のほうが高校生よりも暴力沙汰を起こしていることになります。この傾向は「暴力の低年齢化」として、新聞等でも大きく報じられました。

 なお、ひと口に小学生といっても、6歳から12歳までの幅広い年齢層を含んでいます。学年別の暴力行為の加害者数を2006年度と2014年度で比べると、表1のようになります。

 数の上では、中学生が飛びぬけて多くなっています。2014年度のピークは中学校2年生で1万3091人。年齢でいうと13~14歳で、第二次反抗期の真っ盛りです。「暴力行為が最も多発する学年は?」という問題が教員採用試験でよく出ますので、受験予定の学生さんは覚えておきましょう。

 それはさておき、この8年間の増加倍率に着目すると、年少の児童ほど高くなっています。学校に上がって間もない小学校1年生では、5倍以上に増えています。「小学校1年生の暴力って何だろう?」と思ったりしますが、さすがに対教師暴力などは皆無でしょう。相手にケガをさせたケンカ(児童間暴力)や、教室内の器物損壊などが大半であると思われます。