親が遺産を残せば、たいていの子どもはダメになる
阪部 3回にわたって井上さんのお話を伺ってまいりましたが、最終回の今回のテーマは「お金」です。プロジェクトファイナンスは金融業界の中でいわば“エリート街道一丁目一番地”です。そういうと、皆さんは映画などでよく見かけるパリッとアイロンをかけたシャツにサスペンダーをした登場人物をイメージされるかもしれませんね。そんな金融業界の雄である井上さんに子どもに対する「マネー教育」について読者にアドバイスをいただきたいと思います。まず、お聞きしたいのは遺産についてです。子ども達にどう残すか。使い切って残さない派もいるようですが……。
井上義明さん(以下、井上) 財産を子どもに残すか、残さないか。この二者択一の私の答えは「残さない」です。残せば、たいていの子どもはダメになります。働かなくても何とかなると思わせるお金があると、人は努力しなくなりますから。子どもには、自分の力で稼ぐ力を身に付けてほしい。ただし、一方で親が子どもに残してあげなければならないものもあります。それは教育です。ビジネスエシックスの根幹となる倫理観も同様です。いわば「ものの考え方」や価値観です。教育はお金次第、という面もありますので、こちらには惜しみなく投資したい派です。
―― 海外の富裕層などは子どもが大きくなると100万円単位でお金を与え、「株でも債券でもいいから、自分の裁量で使ってみなさい」と教育をするそうですね。
井上 うちではそういうことはしません。もらったお年玉などは100%貯金させました。恐らく今でも手を付けずに残っていると思いますよ。
―― それは倹約の大切さを学ばせたいからでしょうか?
井上 それもありますが、その時分の子どもがお金を手にして買う物などおもちゃくらいが関の山だと思うからです。