少子高齢化に直面している日本で、子どもの貧困が深刻な問題になっています。問題解決のために、どのような支援や政策が必要となるのでしょう。今回は、この問題にアカデミックな立場から取り組む首都大学東京・阿部彩教授を、子どもの貧困撲滅の活動を続けるNPO法人フローレンス代表理事の駒崎弘樹さんがインタビューしました。

16%の子どもが「4人世帯で年間手取り所得244万円以下」に暮らす

駒崎弘樹さん(以下、敬称略) 日本の子どもの貧困が問題視されています。今日は、この問題に早くから着目し、社会政策研究の立場から提言を続けられている阿部彩先生の元に伺いました。

首都大学東京・阿部彩教授
首都大学東京・阿部彩教授

 まず、基本情報の共有として、2013年の調査で日本の子どもの相対的貧困率(※)が16.3%だったということは、大変ショッキングな数字として世間に知れ渡りました。実に6人に1人の子どもが貧困状態にあると。一億総中流と呼ばれていたはずの日本の社会で、にわかには信じ難い数字として受け止められています

※相対的貧困率……所得の中央値の半分に満たない所得の世帯員の割合のこと。例えば、年収の中央値が500万円の場合、年収250万円以下で生活する世帯の割合を指す。

阿部彩さん(以下、敬称略) 実態が見えにくい現状もあるとは思いますが、GDPと同様に信頼できる数値です。実際にはどういう状況の人達を示すかというと、4人世帯で年間の手取り所得が244万円以下の世帯です。実際に、16%の子ども達がそういった世帯で暮らしているのが現実なのです。

 日経DUALを読んでいらっしゃる共働きの方々のほとんどは、この貧困基準を超えていらっしゃると思います。かといってゆとりがあるかというと、決してそういった実感はなく、「子育てにもお金がかかるし、まぁ、うちは中流だよなぁ」くらいの感覚ではないでしょうか。それを考えると、年収244万円以下で子ども2人を育てることの難しさがご想像できるのではないかと思います。

駒崎 すごく厳しいですよね。

阿部 厳しいです。子どもを飢えさせることはないにしても、普通の家庭が当たり前にしている生活ができないんです。例えば、新学期を迎える時期に、新しい上履きを買うための数千円が捻出できない。結果、どうなるかというと、子どもが小さくなった上履きのかかとを潰して履いたり、おへそが見える体操着を着続けたり。月に1回の外食や、年に1回の家族旅行といったささやかな楽しみも手の届かないぜいたくです。

駒崎 修学旅行や部活動への参加もままならないと聞きます。