「隂山メソッド」と呼ばれる独自の学習法を生み出し、「子どもの力を伸ばす指導」にこだわり続けてきた教育者の隂山英男さん。最近では、Twitterで発信している「子育ての知恵」が話題を呼んでいます。「子どもに対して何をできているかは二番目の話。一番は自分が1人の人間として納得のいく生き方をしているかということ」「一番まずいのは、お母さんから笑顔が消えること」など、忙しいママ&パパたちの心をすっと軽くしてくれるようなツイートが印象的です。

 プライベートでは3人の子ども持つ隂山さん。教育者として、父としてのこれまでの経験を振り返り、「子育てにおいて一番大切なことは何なのか」を語ってもらいました。

五輪メダリストにインタビューして学んだこと

日経DUAL編集部 Twitterで発信されている「子育ての知恵」が話題です。こういったツイートを始めたきっかけは。

隂山英男さん(以下、敬称略) 自身の子育てを振り返って、子育てにおいて大事なことって何だったんだろうと考えたとき、「お母さんの笑顔だ」ということに気づいたんです。そのことを世の親御さんたちに伝えたいなと思いました。

隂山英男(かげやま・ひでお) 1958年兵庫県生まれ。岡山大学法学部卒業、教師に。反復学習で基礎学力向上を目指す「隂山メソッド」を確立する。「百ます計算」に代表される「徹底反復シリーズ」などが有名。文部科学省中央教育審議会特別委員、大阪府教育委員長などを歴任。現在、立命館小学校校長顧問。
隂山英男(かげやま・ひでお) 1958年兵庫県生まれ。岡山大学法学部卒業、教師に。反復学習で基礎学力向上を目指す「隂山メソッド」を確立する。「百ます計算」に代表される「徹底反復シリーズ」などが有名。文部科学省中央教育審議会特別委員、大阪府教育委員長などを歴任。現在、立命館小学校校長顧問。

 私自身は父親として最悪でした。仕事の都合で、家族をさんざん振り回してきたんです。新しい家を建てて家族一緒に住もうねと言っていた矢先に、広島への赴任を決めてしまって、長女と次女は地元に残り、しばらくばらばらに暮らすことになりました。その数年後には、京都に移ることになって。今度は、大学受験を控えた次女が妻とともに1年間広島に残って暮らすことになりました。こんな調子で、父親は家族に苦渋をなめさせてきたわけです。にもかかわらず、家族が崩壊することなく、子どもたちはたくましく育ってくれた。それは妻が、とにかくよく笑い、笑わせる人だったからだと思います。

DUAL編集部 「お母さんの笑顔が大事」というのは、先生ご自身の体験がもとになっているんですね。

隂山 ロンドン五輪のメダリストにインタビューをしたときにも、同じ発見がありました。吉田沙保里さん、福原愛さんといった輝かしい成績を持つ選手たちのお母さんは、どんな風に子どもと接してきただろうと思い、聞いてみたんです。すると決まって「笑顔」という答えが返ってきた。選手たちのお母さんは、成績に一喜一憂するのではなく、笑顔を絶やさないようにして、「子どもの気持ちをいかに楽にするか」ということを心がけていたのです。そして選手自身も、みなとても明るく、笑顔に屈託がない。それで私は、「ああ、人間の力を発揮させる根源は笑顔なんだ」と確信しました。