「共働き家庭は、収入面でリスク分散していることになるので、投資で一定のリスクを取ることも可能だと思います」と言うのは、マクロエコノミストの崔真淑(さい・ますみ)さんです。若かりしころ、投資で大失敗した貴重なエピソードも挟み込みながら、専門のマクロ経済の視点から、現金以外の資産を持つことの大切さを語っていただきます。

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ダブルインカムだからこそ、投資でリスクを取るべきだ

マクロエコノミストの崔真淑さん
マクロエコノミストの崔真淑さん

 マイナス金利政策が始まり、連動して預貯金の金利切り下げのニュースが報じられる昨今、「うちも投資を始めたほうがいい?」と話しているご家庭もあるかもしれません。

 「主要先進国でみると、日本は金融資産の中の現金比率が4割。逆にアメリカでは、金融資産の4割が株式や企業への出資などのリスク資産が占めています。日本人の貯蓄好きはよく知られていますが、そもそもそれはなぜなのでしょう? 研究結果によれば、どうやら不動産と関係があるようです」と、マクロエコノミストの崔真淑さんは語ります。

 日本は家計資産に占める不動産の保有比率が4~5割にも上りますが、アメリカでは2割程度にとどまります。新築志向が高く、中古住宅の価格がどんどん目減りする日本に対し、アメリカでは市場が中古中心で価値が急激に減ることもありません。

 「つまり、日本では家計資産全体における不動産の比率が高過ぎるのです。ですから現金が手元にあっても、さすがにそれ以上のリスクを取ろうとはせず、つい貯蓄に回してしまうのではないかということが考えられます」(崔さん。以下、かっこ内は崔さん)

 そのうえ「借金は後ろめたい」と感じる風潮もあり、手元にまとまったお金があってもローンの繰り上げに回してしまう傾向があるそうです。家計のバランスシートから見れば、大きな負債を少しずつ減らすことは意味がありますし、一般的に「住宅ローンは繰り上げ返済で減らしていくべきだ」と語られがちです。

 でも、現在のような超低金利が続く状況では、特にダブルインカム家庭の場合は、その原則から離れて考えてもいい、と崔さんは言います。「仮に住宅ローンの金利が1%の場合、100万円を繰り上げ返済しようと思うのであれば、そのうちの20万円を、2%、3%、5%などの利回りで運用するくらいのリスクを取ってもいいと思います」。

 大きな借金を抱えている状態は心配でも、ローンの金利と、投資で得られる金利の差に注目してもいいのではないかというのです。

 「共働きではなく、単身者や夫婦のうち労働者がどちらか一方の場合、将来、何があるか分からないからという理由で、住宅ローンの繰り上げ返済を優先させるのは納得できます。でも、ダブルインカムというのは、収入面でのリスクが分散されているということです。つまり、投資がしやすい環境だといえるのです」

 ちなみに、既に住宅ローンを借りている家庭は、金利だけでなく手数料などもしっかり考慮しつつ、現在よりも有利になるようであれば借り換えを検討する方法もある、と崔さん。

 「マクロ視点で言えば、今回の日本のようにマイナス金利が導入された場合、その政策はなかなか変更されません。しかし、金融機関の立場から言えば、マイナス金利により経営が圧迫されたら、貸し出す際の金利を上げて、収益を引き上げざるを得なくなる可能性もあります」

 ヨーロッパにおけるマイナス金利政策は、日本とは内容が大きく異なるため単純に比較することはできませんが、ヨーロッパではいったん落ち込んだ金融機関の貸し出し金利が、後になって上昇したという事例もあるそうです。これを考慮すると、マイナス金利政策下であっても、銀行の金利が単純に下がり続けるだけとも言い切れません。その可能性は知っておきましょう。

<次ページからの内容>
・ ダブルインカム家庭向け「月10万円の“理想的な資産配分”」とは?
・ 崔さんおすすめの投資商品はコレだ!
・ 分散投資をする際の注意点
・ 崔さんの勉強意欲に火をつけた、20代での投資での失敗エピソード
・ やっぱりダブルインカムが投資をすべき本当の理由