絶えず流れる子ども虐待のニュース。ニュースを見るたびに胸を痛めている人は多いのではないでしょうか。今回、子ども・子育て支援の政策に熱意を持って取り組んでいる山本香苗・前厚生労働副大臣を、新生児特別養子縁組(赤ちゃん縁組)事業をスタートさせて赤ちゃんの虐待死ゼロを目指すNPO法人フローレンス代表理事の駒崎弘樹さんがインタビューしました。前回の記事「虐待を防げないのはなぜ」に続いて、後編をお届けします。

児相につながるまで最長2分

駒崎弘樹さん(以下、敬称略) 前回のお話で、国は動きつつあるということは分かりました。でも、国だけに頼っていてはいけませんよね。児童虐待防止のために、僕達が個人レベルでできることといえば、まずは虐待を発見したときの通報ですね。正式には「通告」というのですが、ここでは通報と表現します。

 まず、虐待が匿名で通報できるということは、まだあまり知られていませんよね。通報のアクセス法としては、昨年7月に「児童相談所全国共通ダイヤル」として3ケタの「189(いちはやく)」が設定されて、「かけやすさ」の点では前進したと思います。夜間休日も対応するというのも大きいですね。

「児童相談所全国共通ダイヤル」 
1 8 9 (いちはやく)

 でも、この189、「かかってきた電話の7割以上が途中で切られている」というニュースを見たんですが……これはどうしたことでしょうか?

山本香苗議員(以下、敬称略) 西日本新聞が報道した福岡県での数字で全国の状況を表すものではないのですが、それにしてもショックな数字でした。駒崎さん、189に電話したことあります?

駒崎 あります。

山本 一度かけた方は分かると思うのですが、ガイダンスが長いんです。

駒崎 そうなんです!!

山本 「あなたのお住まいの郵便番号は」とか悠長に聞かれて、児相につながるまで最長2分もかかるんです。これは私達もすぐに察知しまして、改善に向けた検討が進められています。今年度中には、もう少し時間短縮できるようになると思いますが・・・。(※塩崎厚生労働大臣はこの対談後の3月4日、ガイダンスを少なくとも今の半分以下にするなどの見直しを春から行うことを明らかにした

駒崎 ちょっと早口にするとか(笑)? 消費者相談とかならまだいいのですが、虐待の通報って時に一刻を争いますよね。そんななかで2分も待たされるというのはちょっと…。僕は自分の郵便番号をすぐに思い出せなかったし。110番のように最寄りの警察に即つながるシステムにすることはやはり難しいんですか?

山本 システム構築に結構お金がかかるんです。まずは今のシステムの中で通報がより早くつながるよう再度督促してみます。

駒崎 分かりました。では、僕達もとりあえずは2分を我慢して通報しよう!と心に決めましょう。

 虐待防止の観点でもう一つ伺いたいのは、子どもの貧困対策です。「子どもの貧困」というキーワードはここ数年でだいぶ注目されるようになったと思うのですが、政策となるとまだまだ手を打てていない状況ですよね。昨年の秋に首相官邸で「子どもの貧困対策のために寄付を募ります」とか発表していましたが、あれは何だったのでしょうか。そして集まった金額が300万円とか…コントなのかと思いました。日本の将来のためなのに、そこは寄付じゃなくて税金投入でしょって思うのですが。