「食」「住」「遊」を一度にこなそうとしない
早朝に自宅を出発して車を走らせること約3時間半。林に囲まれたキャンプ場に到着し、車を勢いよく降りた子どもが叫んだ最初の一言は「ねえ、私、一生ここに住んでもいい?」
「ちょっと、ちょっと、まだ気が早いんじゃない?」と内心突っ込みつつも、全身を包み込む緑の薫風があまりに気持ちよく、子どもの素直な感動に共感する自分がいたりして……。
「自然の中に入ると、子ども達は楽しみ方を見つけるのがとても得意です。何でもない葉っぱや石も立派な遊び道具になる。キャンプに来たら、親は自分が遊び方を教えようとするよりは、一緒に発見しながら遊ぶ発想でいるといいと思います」。そう話すのは、“アウトドアを取り入れることで、生活はもっと快適になる”との思いから、快適生活研究家の肩書きで活動する田中ケンさん。田中さんは現在24歳になる息子が生後6カ月のときから親子キャンプを楽しんできたという筋金入りキャンパーだ。
田中さんによれば、キャンプの構成要素は「食」「住」「遊」の3つ。親子キャンプでは最初からこの3つを一度にこなそうとすると失敗してしまうことが多いそう。なにせ、慣れない自然の中で慣れない作業が目白押しのアウトドアでは、テント設営にとんでもなく時間がかかった後にようやくごはんの準備と思えば、うまく火がつかなかったり、子ども達が「おなかペコペコ!」と騒ぎだしたりと、へとへとに疲れる理由はいくらでもある。
初回から楽しむためにも、例えばアウトドア料理をあれこれ作ってみたいなら、その回はテントを張るのは諦めて、コテージに泊まる選択をしたり、2回目のキャンプでテントを基地にして過ごしてみたいなら、食事は家からの持ち寄りや買ってきたものにしたり、3回目はカヌーや山登りの「遊」を楽しみたいなら、「食」「住」にはそれほど力を入れないなど、1回1回どの要素に集中して楽しむかを決めておくことがコツだという。そして、すべての要素を一通り楽しんだら、次からは2つずつを同時に取り入れていく。全部をいっぺんに欲張らない。子ども達が大きくなるころまで、と長く親子キャンプを楽しみたいなら、ぜひ覚えておきたいアドバイスだ。