あれよあれよという間に巻き込まれていった感覚
日経DUAL編集部 夫婦の備忘録と友人への伝言板を兼ねたブログから始まって、書籍の出版と来て、今度は映画化が実現しました。この流れ、広がりについて、率直にどう感じていますか。
清水浩司さん(以下、敬称略) 奇妙な状況としか言いようがないですね(笑)。比べるのもどうかと思うのですが、妻ががんだと分かってから、あれよあれよという間に巻き込まれるようにして、がんに初めて対応するのにいっぱいいっぱいだった日々に、何か近いものがあります。
自分の意志や意図を超えたところで人生が進んでいくあたりが、似ているなと感じるんです。
書いたものが映画になるのは、僕にとってもちろん初めての経験ですから、初めてのことを前にしてフーフー言っているのは、当時の日々と同じなんです。ここ数年、ずっとこんなふうに大きい流れに翻弄されて溺れそうになりながら、なんとか対応しているという感じです。
―― 自著を下敷きにした映画『夫婦フーフー日記』では、ダンナ役を佐々木蔵之介さんが演じています。
清水 映画の中では、過去を振り返るという設定で、自分達の結婚式を、ダンナ役の佐々木さんと幽霊になったヨメ役の永作さんが一緒に眺めるという場面がありまして、あのシーンの撮影に僕も立ち会っていたんです。自分達の結婚式を見ているダンナとヨメを、さらに僕が横から見ている。ある種、過去の自分を俯瞰しているような感じがあって、どれが現実でどれがフィクションか分からなくなることがありました。