愛情溢れる辛口評論で、サッカーファンに愛され続けているセルジオ越後さん。延べ60万人以上の子どもにサッカーの楽しさを伝え続けてきた「さわやかサッカー教室」の主催者としても有名で、現在はアイスホッケーチーム「H.C.栃木日光アイスバックス」のシニアディレクターを務めています。

 サッカーのみならず日本スポーツ界に貢献しているセルジオ越後さんに、スポーツを通した親子の接し方について話を伺ったこの特集。第1回の「セルジオ越後が叱る『日本の親は遊び心がない!』」、第2回の「日本独特の『補欠』が子どもをダメにする!」に続き、第3回は、子どもにスポーツを「教えよう」とする日本人の固定観念に対して、セルジオさんが苦言を呈します。

主な内容
●スポーツを「教える」という発想自体が、日本人の変なところ
●保育園や幼稚園の先生みたいな指導者が、スポーツの世界にもいたらいいのに
●「巨人の星」の親父になんか、ならなくてもいい
●「親子で頑張りました」的な発想でやっていこうとするのは良くない

スポーツを「教える」という発想自体が、日本人の変なところ

── 特に父親は、子どもと一緒に何かスポーツをして教えてあげたいと思うものですが、セルジオさんはどう考えていますか?

セルジオ越後さん(以下、敬称略) 長い間、子ども相手にサッカー教室をしてきたけれど、みんなに「セルジオさんは子どもにどうやってサッカーを教えているんですか?」って聞かれるんだよね。それが日本人的な発想でおかしなところなの。なぜならば、スポーツっていうものは教えられないものなんだからね。

 ミスターこと、長嶋茂雄さんに誰が野球を教えたのかっていうことを考えればわかりやすいでしょ。教えてあげてあのような伝説的なプレーヤーになれるんだったら、息子の一茂君だって、もっとうまくなって父親に引けを取らない活躍をすることができたはずでしょ? 野村克也さんの息子のカツノリ君だって同じことだよね。

 日本人のスポーツに対する考え方は、ちょっと違うのね。学校単位でスポーツをやる社会になってしまっていて、スポーツとは学校で学ぶものだっていう意識がなかなか頭から抜けない。エンジョイするスポーツじゃないんだよね。言うなれば「お務め」みたいなことになっちゃってる。

 たまに高校の部活を見に行くこともあるけれど、練習が終わった後に監督が「明日は練習は休み」って言うと、みんなが「やったー!」って喜ぶのね。その姿を見て、もうこのチームはダメだな、伸びないだろうなって思ったね。だって、サッカーを「やらされている」っていうことでしょ。「明日休みなの? もっとサッカーやりたい!」って生徒が言うような状況が、本当のスポーツのあるべき姿なんだよ。

 子どもというのは、スポーツにしろ勉強にしろ、大人から常に圧力がかかってばかりだと、うまくいかなくなった時に疲れてしまってダメになるんだよね。