ちょうど1年前、夫が仕事を辞めると言って、我が家の暮らしは激変しました。経済的な打撃はもちろんのこと、仕事をしていない夫を受け入れるのに戸惑って、自分でも思っていなかったほど気持ちが動転してしまった私。そのいきさつは前回「夫の生き方を真正面から考えてみた」で書きました。

 さて、夫が仕事を辞めて家にいるようになると、それまで考えていなかった長男(11歳)の中学受験が視野に入ってきました。共働きではとても中学受験なんて無理!と公立行きを決めていたのに、「のんびり学べる私立に入れてみようか」と思いついたのです。小5の夏、今からではもう遅いかもと言われながら、でも行きたい学校は偏差値高くないしと、とりあえず通い始めた進学塾。夫が作った弁当を持って、長男は学校から帰るなり駅前の塾へと走る毎日。週に5日は受験勉強です。

子どもながらに「これは狂気の沙汰だ」と感じた私の中学受験時代

 私も夫も、中学から大学まで私立一貫校で育ちました。共に一部上場企業のサラリーマン家庭で育ち、郊外の家から都心の学校まで、毎日満員電車にゆられながらの青春でした。

 私の中学受験の思い出といえば、算数の参考書をカッターで切り刻み、解けない問題を前に大声で罵る(今考えれば、すごいストレスだったんでしょうね)。母は母で、休憩中に私が読んでいたメアリー・ポピンズをバリバリと手で引き裂いて勉強しろと叫ぶという、修羅場の毎日でした。「推薦図書だよそれ! 表紙ごとちぎるってどうかしてる。」子どもながらに、これは狂気の沙汰だと思っていました。

 それでも塾が好きだったのは、私が地元の中学に行きたくなかったからです。小学校で浮き上がっていた私は、塾の友達となら楽しく過ごせたし、中学も地元に行けばまたうまくいかないことは目に見えていました。