「厚生年金」や「国民年金」といった公的年金制度は、老後生活の柱。
少子高齢化で様々な課題も指摘されてはいるが、死ぬまでもらい続けることができる年金の存在が大きいのは間違いない。
ただ公的年金制度では、「専業主婦が優遇されている」という話を聞いたことはないだろうか。専業主婦は年金の保険料を払わなくても年金を受け取ることができる仕組みがあるからだ。年金は「保険料を一定期間払ったから、老後に年金を受け取れる」というのが大原則のはず。現に会社員の女性は厚生年金保険料がしっかり給料から天引きされている。これはいったいどうなっているのか。女性は働かない方が年金制度上は得なのか。本当のところはどうなのか。
「年金制度では専業主婦が有利」というイメージの基になっているのは「第3号被保険者」と呼ばれる仕組みだ。この仕組みをまずざっとおさらいしておこう。
「熟年離婚」対策で生まれた年金制度
下の図を見てほしい。日本の公的年金制度ではまず、すべての国民は20歳になると「国民年金」に入る(全国民の基礎的な年金部分なので「基礎年金」とも呼ぶ。「1階部分」という人もいる)。そのうえで会社員ならば「厚生年金」、公務員ならば「共済年金」に加入する(これらは国民年金に上乗せされる部分なので「2階部分」)。
「会社員になると厚生年金に入る」という言い方をするし、会社員が給料から天引きされているのも厚生年金保険料なのだが、実際には国民年金と厚生年金の両方に加入しており、厚生年金保険料の中には国民年金部分の保険料も含まれている。
厚生年金や共済年金に加入し、同時に国民年金にも入っている会社員や公務員を「第2号被保険者」と呼ぶ。国民年金だけに入っているのは自営業者。これらの人は「第1号被保険者」と呼ぶ。そして何かと話題の「第3号被保険者」と呼ばれる人たちがいる。これは会社員や公務員に養われている配偶者だ。そのほとんどは専業主婦ということになる。パート勤めで多少の給料があるという人も珍しくない。
第3号被保険者は、第2号被保険者である夫に養われており、収入もないという前提なので、保険料は払えない。そこで保険料を払わなくても国民年金はもらえるという仕組みになっている。
この仕組みができたのは1986年。それまで夫が会社員で妻が専業主婦という世帯については、妻の年金はなく、「老後は夫の厚生年金で夫婦共に生活する」という考え方だった。