「乳幼児にはテレビを見せないほうがよい」「スマホで子守をさせるべきではない」など、子育てにおいてメディアの利用をネガティブにとらえている親は多い。

 だが、テレビの視聴やスマホの利用は、実際のところ乳幼児にどんな影響を与えているのだろうか。メディアが子どもに与える影響を研究しているお茶の水大学教授の菅原ますみさんが、最先端の研究をもとに解説する。(全2回)

菅原ますみさん
お茶の水女子大学大学院人間文化創成科学研究科教授。国立精神・神経センター精神保健研究所、家族・地域研究室長などを経て、現職。専門は発達心理学、子どものパーソナリティ発達、発達精神病理学。著書に『個性はどう育つか』(大修館書店)、『0〜6歳のしつけ百科』(主婦の友社)など。NHK“子どもに良い放送”プロジェクトで共同研究者を務める。自身も大学生と高校生の2人の息子を育てる母。

――菅原さんの専門分野について教えていただけますか。

菅原ますみさん(以下菅原) 私は子どもの発達心理学、なかでも発達精神病理学を研究しています。

 例えば、「ADHD」と呼ばれる注意欠陥多動傾向(編集部注:多動性、不注意、衝動性などの症状を特徴とする発達障害のひとつ)があったとしても、それが社会的な不適応につながらないためにはどうしたらいいかなど、子どもの心の健康維持を目的に研究を続けています。

――テレビが子どもに与える影響についても研究を行っていますね。

菅原 NHKが実施している“子どもに良い放送”プロジェクトに、共同研究者として参加しています。

 この研究は、子どもがテレビ、ビデオ、ゲームなどとどのように接触しているのか、そして子どものメディア視聴がその後の成長にどんな影響を与えるかを、同じ子どもたちを0歳から継続して追跡調査しているものです。調査は2003年から始まり、追跡調査は今も続いています。

“子どもに良い放送”プロジェクトのホームページ
“子どもに良い放送”プロジェクトのホームページ

テレビの影響が正確に分かったのは、つい最近だ

――テレビ視聴が子どもに与える影響の研究は、これまで行われてこなかったのですか?

菅原 研究自体はずっと昔から、それこそテレビが普及し始めた頃から多くの研究者が行ってきました。アメリカでは1950年代、日本では1970年代のことです。

 ただし、テレビ視聴が子どもに与える影響を科学的に調べるのは、長年難しい問題でした

――というと?