「本当に時間を使いたいこと」を軸に据える

 みなさん、こんにちは。森本千賀子です。現在、企業の採用支援・求職者の転職活動支援を手掛けるコンサルタントとして日々奮闘しています。小学4年生と保育園児、2人の男の子を育てるワーキングママ(ワーママ)でもあります。親は遠方に住み、夫は週4~5日出張で家を空けるため、家族の手助けは受けられません。

 でも、責任ある仕事、家事、育児のすべてを一手に背負っていながら、周囲から「モリチ(私の愛称)は何かに追い立てられているという感じがほとんどないよね」とよく言われます。その秘訣は「メリハリの付け方」にあるのではないかと自分では思っています。

 仕事、家事、育児。それぞれでやらなくてはいけないことを書き出したら山のようにあります。でも、「どれから手をつけたらいいの!?」とあたふたしているうちに多くを後回しにしてしまったり、中途半端なまま終わらせてしまったり。「あれもこれもやらなくちゃ」と思うほど、常に何かが心に引っ掛かっている状態に陥ってしまうのです。

 そんなとき私は原点に立ち戻り、「自分が本当にやりたいことは何か」と考えてみるようにしています。私の愛読書の一つ、『7つの習慣――成功には原則があった!』の著者スティーブン・R・コヴィー博士は、こう言っています。

 「最も大切なことは、最も大切なことを最も大切にすること」だと。

 自分が大切にしたいこと、本当にやりたいことを見つめ直し、そこに費やす時間をいかに確保・拡大するかを考えることが第一歩です。私が時間の使い方に悩んだ末にたどり着いた「最も大切なこと」は、仕事においては「顧客や転職希望者など、人と少しでもたくさん話すこと」。プライベートでは「子どもたちや夫と一緒に過ごすこと」。

 この2つを軸に据えて、「自分でやりたいこと」「自分がやるべきこと」「自分でなくてもできること」を切り分けたところ、時間を上手に使って、実績をさらにアップさせることができるようになりました。

日常業務の中で自分にしかできないこと以外は人に頼む

 業務や作業を仕分けした後は「自分でなくてもできること」を思い切って手放しました。仕事においては日常業務の多くをアシスタントに任せました。スケジュール調整、顧客とのアポイント設定、社内への連絡や報告、会議資料の準備、新規取引先についてのリサーチなどです。

 皆さんの中には、「ささいな作業でも、人に任せるのは苦手」「自分でやった方が確実で安心」「説明や指示をしたり、後でチェックしたりする手間を考えると自分でやった方が早い」と、つい業務を抱え込んでしまうこともあるのではないでしょうか。

 そんなときは「その作業によって生み出せる価値」を考えてみてください。自分がやっても他の人がやっても結果にそれほど差がない業務や私以上に業務効率が高い人任せたほうがよいと思うような事務的な仕事は人に任せて、その分空いた時間を「自分ならではの価値」を生み出せそうな仕事に使う方がいいと私は思います。時間が限られているワーママだからこそ、働いている時間は「自分ならではの価値」を大事にすべきなのです。

 人に業務を振る時に説明や指示をするのも確かに最初は面倒ですが、初めに仕事の意義や大切なポイントをしっかり伝えれば、2~3カ月後には細かい指示をしなくても適切に判断してもらえるようになります。実際、私のアシスタントは、私以上に完璧に業務をこなしてくれています。

 アシスタントがいなければ、後輩や同僚に頼んでみるのではどうでしょう。内容によっては先輩や上司を巻き込んだ方が効率が良い場合があるかもしれません。もちろん納得度の高い理由と、相手の同意があることが大前提です。

 例えば、自分が新規顧客開拓よりも、データ処理などのサポート業務の方が得意であり、時間単位の生産性が高いという場合は、新規顧客開拓はよりそれを得意とする別の社員に受け持ってもらえるように上司に相談してみる。自分の子どもの体調が優れない時期に残業や休日出勤が必要な業務が続く場合は上司に掛け合い、期間限定でその業務を別の社員に肩代わりしてもらうようにするなどの方法があるでしょう。

 いずれにせよ、ゴールはチームの生産性を最大限に高めること。子育てで大変な時期を過ぎたら、今度は自分が恩返しする番だと考える気概も必要です。