「わが子が持っている個性をできるだけ伸ばしてあげたい」「子どもの未来の可能性を広げるために、惜しみなくサポートしたい」・・・・・・。ビジネスの一線で活躍し、社会の厳しさも知っているDUAL親だからこそ、まだ小さなわが子の将来を案じ、子どもにとってのベストな進路について中長期的視点から思いを巡らせている人は多いのではないだろうか。

公立・私立進学、留学など子どもの成長における様々な分岐点がある中で、どの道を選ぶかについての正解は各家庭によって異なるが、進路によって教育費が大きく変わってくるのは揺るぎない事実。家族全体の幸せを考慮しながら、理想の方針だけでなく、幼稚園~大学までの進路における力の置きどころや家計の収支バランスについても、堅実な視点を残しておきたいところだ。

では実際、子どもの教育費には、いつの時点でどのくらいお金がかかるのだろうか? 「今どきの受験&進学総覧 特集」第4回は、「小学受験と中学受験ではどっちが得?」「返済不要な奨学金を得られる可能性はどれくらい?」など、各進路を選ぶ際に最低限知っておきたいお金に関する知識について、子どもの教育費に詳しい2人の専門家に聞いてみた。

【今どきの受験&進学総覧 特集】
(1) 「将来は早慶以上」「留学は必ず」 進路への本音
(2) 小・中・高校受験の特徴 わが子に向いているのは?
(3) 公立は荒れる?私立は同質? ステレオタイプの真偽
(4) 受験&留学にかかるマネー新事情 奨学金は使える? ←今回はココ
(5) 学歴神話・就活の真実 10年後の進路&稼ぎ力

【幼稚園から高校までの15年】
オール私立とオール公立の教育費の差は約1250万円!

 平成26年度の文部科学省「子供の学習費調査」によると、幼稚園3歳から高校卒業までにかかる教育費全国平均は、すべて公立に通った場合(オール公立、以下同)とすべて私立に通った場合(オール私立、以下同)で、その差は約1250万円(約3.38倍)。あくまでも平均ではあるが、DUAL読者の平均世帯年収を超えるほどの教育費用の差が見られる。

 ここでいう「教育費」とは、親が子どもに学校教育を受けさせるために支出した「学校教育費」、幼稚園・小学校・中学校の給食費として学校に納付した「学校給食費」、塾や習い事、スポーツ・文化活動など、学校以外の活動のために支出した「学校外活動費」が含まれる。「教育費全体としては、公立・私立のいずれにおいても上昇傾向です」と、子どもの教育費に詳しいファイナンシャル・プランナーの山本節子さん。

 小・中学校、高校とさらに細分化すると、一般的には具体的にどの段階で最も教育費負担が重くなるのだろうか? 日経DUAL読者のアンケートで寄せられた教育費に関する不安や疑問を山本さんに投げかけ、本当のところを詳しく解説してもらった。

【Q1】 公立はお金がかからない、私立はお金がかかるはホント?

【A1】 

● オール公立は約530万円、オール私立は約1770万円かかる
● 私立で最もかかるのは授業料。私立小の「学校教育費」は公立小の15倍!
● 国や自治体の補助制度があるが、所得制限あり

 実際には幼稚園から高校までオール私立というのは少数派で、小学校は公立に進んだ後、中学受験をして私立の中高一貫校へ進学するケースか、小・中学は公立で、高校受験で私立または公立校を選択するケースが多い。幼稚園から高校までトータルで見たときの教育費は家庭によって多種多様だ。

出典:平成26年度「子供の学習費調査」(文部科学省)
出典:平成26年度「子供の学習費調査」(文部科学省)

 文部科学省の調査によると、公立と私立でかかる学校教育費の中で最も差が出るのは、小学校・中学校・高校。いずれも授業料が大きな割合を占めている。私立小学校の年間の授業料平均は約47万円、中学校の授業料平均は約44万円。それに対し、公立の小中学校の授業料は無償だ。学校教育費には、その他に学校納付金、教材費、通学関係費、修学旅行代などが含まれるが、「トータルで見ても、私立小は公立小の15倍、私立中学は公立中学の約8倍の費用がかかるとみていいでしょう」と山本さん。

出典:平成26年度「子供の学習費調査」(文部科学省)
出典:平成26年度「子供の学習費調査」(文部科学省)

 「小中高(大)までの一貫校が多い私立小に進むと、公立小よりも塾代などの教育費はかからないのでは」と考える人もいるが、文科省の統計をみると、塾等の「学校外活動費」において私立小は公立小の2.8倍。“受験のための”学外学習はないといえども、塾や習い事などの学校外活動費の支出も膨らむ傾向が見られる。

東京都の私立高校無償化は年収760万円未満の家庭が対象

 高校の学校教育費の差は、私立が公立の約3倍。高校の場合は「高等学校等就学支援金制度(新制度)」により、年収590万~910万円未満程度の世帯の公・私立高校生には年11万8800円、市町村民税が課税されない同250万円未満程度の世帯の私立高校生には年29万7000円を支給するなど、所得に応じた支給額が配分されている。また、自治体によって私立校への補助制度がある場合も少なくない。例えば、東京都では、2017年度から年収760万円未満の家庭を対象に、私立高校の授業料が無償化になった。ただし、高所得世帯は、こうした恩恵を受けることができない。

 特集第1回で紹介した読者アンケートによると、DUAL読者は中学受験への関心が高いことが分かった。首都圏では、公立小から受験対策をして私立中高一貫校を目指す家庭も少なくない。「私立小に進学し、小学校で塾には行かない」という選択をした場合、ざっくりとどれくらいの金額差が出るのだろうか。

<次のページからの内容>
● 小学受験組と中学受験組はどっちがお得?
● 公立小+受験準備費用vs.私立小 6年間の教育費+補助学習費をシミュレーション
● 中学3年をピークに、補助学習費は私立と公立で逆転現象が!
● 子育てで一番お金がかかる大学時代 入学までに200~400万円を準備
● 子どもにかける教育費 後悔しない3つのポイント
● 奨学金を得ることで、未来の選択肢は広がる?
● 奨学金の種類、「貸与型、給付型、減免型」の違い
● 学業成績優秀者を対象とした独自給付(減免)型奨学金の大学例