深刻化する前に行動したい予防策
前回のマタハラ事例を読んで、「あれもマタハラだったの?」と思い当たるようなことがある人がいたかもしれない。セクハラやマタハラ、パワハラは、明らかな違法行為とみられるものよりも境界線が曖昧なものが多いのは、やはり受け手側がどう感じるかが大きく関係しているからだ。ハラスメントが深刻化する前にできる予防策は何だろうか。
1.まずコミュニケーション
「たとえ同じような言葉を投げかけたとしても、人によってマタハラと思われるか思われないかの違いがあるのは、やはりその人と普段どのような関係性があるのかが影響するからです。普段からきちんとコミュニケーションが取れている関係ならば、そうした言葉の真意も伝わるものですよね」とマタハラNetの宮田祐子さん。妊婦側も上司や同僚側も互いにコミュニケーションを日ごろから取る努力を、まずは大事にすることを勧める。
「妊婦側も、上司が聞いてくれるのを待っているだけではなく、働きやすい方法を提案していくことも必要です。『こんな申し出は、わがままかな』とか『私が我慢すればいいだけだから』と遠慮して無理を重ねることはやめましょう。これから後に続く後輩のことも考えれば、妊産婦が心身の健康を守りながら働き続けられる職場に移行するために必要な改善提案です」(宮田さん)。
上司への働き方の提案や話しかけ方は、前回の記事もぜひ参考にしてほしい。
2.医療的な証明を見せる
「体調が悪い」と言っても、なかなか見た目だけでは伝わりにくいのがつわりなど妊娠中の不調。その場合には、医療的な証明を提出し「仕事は頑張りたいのですが、医者からこのように注意するようにと言われていまして……」と伝えるのも手だ。
「つわりが長く続いたりすると、症状を説明しても『またか』と思われてしまいがちですよね。個人の気持ちだけの問題ではないことを理解してもらうには、専門家の判断があることを証明するといいでしょう。医者の判断があることで、上司や会社もより重く受けとってくれるはずです」(宮田さん)。
医師の診断書の他に、宮田さんが勧めるのは「母性健康管理指導事項連絡カード(母健連絡カード)」の活用だ。
「母性健康管理指導事項連絡カードは、主治医から会社側に、妊婦の時差通勤や休養の必要性を伝える重要な書類です。従業員が提出した場合、企業側は必ず記載されている指示内容に応じた措置を講じる必要があります。費用も診断書より安価。これをコピーするか、厚生労働省のサイトからダウンロードして、医師に記入してもらうといいでしょう」
ほとんどの母子手帳に様式が記載されているこのカード。存在はあまり知られていないが、改めて母子手帳をチェックし、上手に活用してほしい。