タブレットやゲームなどのデジタル機器に触れる機会が多い現代っ子。夏休み中の子どものデジタル機器利用は、普段よりも親にとって心配事になっているかもしれません。子どもの脳の発達、視力、睡眠、姿勢に与える影響についてお届けする本特集。第2回では前回に引き続き、脳の発達と加齢の専門家である東北大学加齢医学研究所教授の瀧 靖之先生にお話を伺います。

【年齢別特集 小学校高学年のママ・パパ向け】
(1)長時間のデジタル利用は子どもの脳の可能性を狭める
(2)思春期にデジタル漬けでコミュニケーション能力低下も   ←今回はココ!
(3)子どもの首ねこ背・夜更かし デジタル弊害と改善法
(4)近視は遺伝と環境で起こる デジタル機器の影響は?

 子どもの成長に伴い、ママやパパが抱く育児の喜びや悩み、知りたいテーマは少しずつ変化していくものです。「プレDUAL(妊娠~職場復帰)」「保育園」「小学生低学年」「高学年」の4つのカテゴリ別に、今欲しい情報をお届けする日経DUALを、毎日の生活でぜひお役立てください。

 前回記事では、長時間のデジタル機器の利用は「子どもが脳を成長させる様々な経験をする機会を喪失してしまう」ことをお伝えしました。今回は、瀧先生が指摘するもう一つのデジタル機器の弊害、「コミュニケーション能力の低下」について解説します。

脳の発達は「後ろから前へ」。前頭葉は小学校高学年〜思春期に発達

 脳は領域によって、それぞれ担う役割が異なり、発達するピーク時期も異なるそうです。子どもの脳は、脳の後ろから前に向かって発達していくことが、研究によって分かっています。

■生後〜
後頭葉(視覚を司る部分)
側頭葉(聴覚を司る部分)


■3歳〜
頭頂葉(感覚野は触感、運動野は体の動きを司る部分)


■小学校高学年から思春期
前頭葉(思考力・判断力・コミュニケーションを司る部分)

 脳で最後に発達するのが前頭葉です。中でも「前頭前野(ぜんとうぜんや)」と呼ばれる部分は、考えたり、判断したり、計画したり、決定したり、洞察したり、コミュニケーションを取ったりといった人間らしい機能を担う部分。前頭前野は小学校高学年から思春期にかけて発達します。

 前頭前野が発達すると、思いやり、気遣いを介した、より高度な人間関係が築けるようになり、人の気持ちに共感したり、物事を判断したり、自己をコントロールしたりするといった能力が高まります。前頭前野は思春期にかけても発達が続くので、小学校高学年の段階では、まだ十分に育っていないのです」(瀧先生)

 小学校高学年から思春期は、前頭前野の発達に特に重要な時期。最も人間らしい脳の領域に関わるこの時期に、デジタル機器がどんな影響を与えるのでしょうか。また脳を成長させる年齢別おすすめの習い事について、次ページ以降でお伝えします。

<次のページからの内容>
・ メールやSNSでコミュニケーション能力が低下
・ 脳の記憶力をぐんぐん高める勉強のコツ
・ 「英語を習うなら早いうちから」は間違い?
・ 年齢によってベストな時期がある!脳を伸ばす習い事はコレ