社内政治の情報戦は「おじさんビルトイン」武装で!
今回の女性エグゼクティブ調査で「これまでのキャリアを振り返って、つらかったこと」を尋ねたところ、一番多かった回答は、「男性だけでネットワーキングが行われ、女性は重要な情報を入手できなかったこと」というものでした。主にタバコ部屋や飲み会で、大事な意思決定がなされ、その情報が共有されない。女だからという理由で爪弾きにされ、同じ土俵にあがることすら許されない。
最近では「女性たちが、こうした男社会に諦めているからダイバーシティーが進まない。女性たちがもっと声を上げるべきだ」という論調もよく聞こえてくるようになりました。数多(あまた)の経営者やエグゼクティブの相談役として絶大な信頼を得ている森本さんは、こうした男社会の理不尽とどう付き合ってきたのでしょうか。
「最近は社内の喫煙者も減り、一昔前よりはだいぶ状況が変わってきているとはいえ、生々しい意思決定や情報共有が居酒屋や喫煙室での談話中になされる、という風潮はまだまだ存在しています。いわゆる下ネタ込みの男性同士のおしゃべりが交わされるお酒の席に女性がいると白けるというムードもあり、居心地の悪さを覚える方も少なくないようです」(森本さん)
自分の中に適度な“おっさん”を飼い慣らし、下ネタも涼しい顔で流すことができる女性もいる一方で、正義感や倫理観が強く、いわゆるグレーゾーンを許せない人もいる。声に出さずとも不愉快だと感じることも多いはず。とはいえ、男女の平等を声高に主張し、露骨な態度を取ることで「彼女の前で、この話題はご法度で」と男性陣から見えない線引きをされてしまうのは損だ、と森本さんは言います。
なぜならば、もし仮に実績のない「おじさんビルトイン」タイプの女性と、実績はあるが「おじさん化を毛嫌いする」タイプの女性がいた場合、仕事の場では、やはり前者のほうが引き上げられる可能性がまだまだ高いから。
「実績や業績はある意味、運です。支援してくれる人がいれば上げられる。誰が見ても成功が約束されているプロジェクトにアサインし、成功体験を積ませたうえで次のポジションに上げる。そんな『いかにも』というケースは実際、よくあります。自分で自分を“おじさんナイズド”するかどうかは別にして、社内政治はうまくなったほうがいい」
「現実問題として、人事は常にクローズな場所で決まるものです。仮に、同じレベルのAさんとBさんがいた場合、意思決定者は自分にとって、よりメリットのある人材を登用するのは自明の理。社内政治に長けたほうがいいと私が言うのは決して『偉くなれ』と言っているのではなく、より経営に近いポジションに身を置いたほうが自分の仕事の裁量が大きくなるし、自己実現への近道にもなるからです。あくまでも社内政治は自分の仕事をしやすくするための手段と捉えてみては」