小学校低学年の児童がいる家庭の多くが利用している、学童。自治体が運営する公設学童や、NPOなどが委託を受けて学校内や近隣施設で運営する学童に子どもを預けている人も多いでしょう。共働き家庭や単身世帯にとってはなくてはならない存在の学童ですが、GWを終え6月に入ったころから「行きたくない!」と言う子が増える傾向があるようです。親としては慌ててしまいますが、長く利用することになる夏休みを前に、「子どもが放課後を楽しく過ごすにはどうすればいいか?」「通っている学童は本当に合っているのか?」などいま一度、見直すいい時期かもしれません。そこで6月の特集では、上下2本の記事で学童の役立つ情報をお届けします。

【年齢別特集 小学校低学年のママ・パパ】
(1) 夏前の「学童行きたくない!」問題 どう乗り越える? ←今回はココ
(2) 低学年の子が安全に留守番できるために必要なこと
(3) 民間学童のサマープログラム いつもとは違う体験を
(4) 低学年夏休みにインターのサマースクール、国内留学

 子どもの成長に伴い、ママやパパが抱く育児の喜びや悩み、知りたいテーマは少しずつ変化していくものです。「プレDUAL(妊娠~職場復帰)」「保育園」「小学校低学年」「高学年」の4つのカテゴリ別に、今欲しい情報をお届けする日経DUALを、毎日の生活でぜひお役立てください。

2014年に学童保育の運営基準を定めた省令が施行

 多くの家庭が小学校に入る際に、子どもを預ける学童(放課後児童クラブ)ですが、その運営基準や、実際の指導基準についてどのようになっているか、あまり知らないという人も多いかもしれません。実は、学童についての国の基準が定まったのはつい最近のことでした。

 これまでは、施策も実態も市町村ごとに大きく異なっていたという放課後児童クラブ。共働き家庭が増え、待機児童が急増する一方、活動内容や質もバラバラな実態のままやり過ごしてきた時代を経て、2014年4月30日に厚生労働省が学童保育の運営に関する基準を定めた省令を出しました。さらにこの省令を受けて、「放課後児童クラブ運営指針」が完成しました。この運営指針の解説書は、現在、誰でも厚生労働省のHPから見ることができます。

■放課後児童クラブ運営指針解説書
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/0000158828.pdf

 例えば、書かれているのは次のようなことです。

■ 1学童につき子どもの数は40人以下が望ましく、有資格者である放課後児童支援員を2人以上配置する。
■ 保護者と密接な連帯を取り、子どもの様子を日常的に保護者に伝え、保護者が子育てと仕事などを両立できるようにする。
■ 子どもの人権に十分配慮するとともに、子ども一人ひとりの人格を尊重して育成支援を行う。
■ 6~12歳の「児童期」の発達に応じた子ども主体の遊びや生活を可能にする。
■ 子どもが学童に通うことの必要性を理解し、自ら進んで通い続けられるよう、家庭と連携して育成支援を行う。

一般財団法人児童健全育成推進財団企画調査室長、野中賢治さん
一般財団法人児童健全育成推進財団企画調査室長、野中賢治さん

 解説書には、子どもが自ら進んで放課後児童クラブに通い続けられるように援助することについても明記されています。

 一般財団法人児童健全育成推進財団企画調査室長の野中賢治さんは、放課後児童支援員、行政担当者、学識経験者(教育・医療関係の専門家等)と共に、2年をかけて解説書の作成に関わってきました。

 「(子どもは)放課後児童クラブに通う意味を理解しても、通い続ける中で様々な出来事や気持ちの揺れが起きることもあります。放課後児童支援員などは、その時々の子どもの様子にこまやかに対応しながら援助を行う必要があります」と野中さんは話します。そして、子どもの様子について、次のように言います。

 「5月は新たな仲間関係がつくられ、新年度の生活リズムが整ってくる反面、疲れも出てくる時期です。そして、6月は子ども同士の関係が安定してくると同時に、遠慮がなくなり、もめ事も生じる時期です。児童クラブ以外のことにも興味を持つことも出てくると思います。だから、疲れが出る6月に『学童がイヤ』と子どもが言い出しても、何の不思議もありません」

 では、具体的にどんなことで子どもが学童を「イヤ」になるのでしょうか? その理由と対策を見ていきましょう。

<次ページからの内容>
 ・子どもが学童をイヤがる6つの理由
 ・対策を考える前に、まず理由を確かめる
 ・子どもも「人間関係」を考えている
 ・子どもの親への安心感、親子の関わりを振り返ることも大切
 ・施設の環境や児童数が「行きたくない」につながることも