近年、40代を中心とした働くパパ世代の間で、感染症の1つである「風しん」が流行しています。風しんはワクチン接種で感染を防げる病気。なのに、なぜ40代男性の間で流行してしまっているのでしょうか。誰もが感染症に敏感になっている今、風しんについても、その実態、感染拡大に伴うリスク、予防法などを多くの人に知ってもらおうと、昨年より展開している「〜保育園と職場で風しん感染を防ごう〜プロジェクト」。その一環として開催された、オンラインワークショップの模様をリポートします。

専門家が解説!なぜ「働くパパ世代の行動が肝心」なのか

 今回、「風しんアクションワークショップ」に参加したのは、日本交通赤羽営業所で働く8名。ファシリテーターは、帝京大学大学院の齋藤宏子さんが務めました。

 まずは、参加者の皆さんの風しんに関する知識をアップデートしていただくために、帝京大学大学院公衆衛生学研究科の高橋謙造先生が、ミニレクチャーを行いました。

今回、風しんについてレクチャーをしてくれたのは、帝京大学大学院公衆衛生学研究科教授の高橋謙造先生。「〜保育園と職場で風しん感染を防ごう〜プロジェクト」の監修をされています
今回、風しんについてレクチャーをしてくれたのは、帝京大学大学院公衆衛生学研究科教授の高橋謙造先生。「〜保育園と職場で風しん感染を防ごう〜プロジェクト」の監修をされています

高橋先生(以下、敬称略) 現在日本では、40代男性を中心に風しんが流行傾向にあります。そのため、米国疾病予防管理センターは、妊婦の日本への渡航に対し注意喚起を行っています。つまり日本は、風しん感染の危険リストに上げられているということです。

 風しんは、医者にとっても診断がつけにくい病気です。主な症状は、軽度の発熱、発疹、首のリンパ節の腫脹で、多くの方が軽症で済みますが、合併症で脳炎を起こす人が4000~6000人に1人、血小板減少性紫斑病を起こす人が3000~5000人に1人程度いるため、決して気は抜けません。

 さらに問題なのが、妊婦さんの感染です。妊娠20週頃までの妊婦さんが感染すると、胎児にも感染し、生まれてくる赤ちゃんの眼、心臓、耳に先天性の重い障害が出現する可能性があります。それを先天性風しん症候群と言います。

 風しんの感染経路は、飛沫感染や接触感染です。1人の患者から5~7人に感染が広がるほどの感染力があります。しかもやっかいなことに、15~30%の人は感染しても症状が出ないため、満員電車などで、気づかないうちに周囲に感染を広げてしまう可能性があるのです。

──では、風しんに感染しないためにはどうしたらいいのでしょうか。予防法はワクチン接種だと高橋先生は話します。

高橋 風しんの予防には、MRワクチンが有効です。これは、麻しん(はしか)と風しんのワクチンがミックスされたもので、1回の接種で95%以上に免疫が付くと言われています。重篤な副作用もほとんどありません。ただし、MRワクチンは妊婦さんには接種ができません。ですから、妊婦さんと赤ちゃんを風しん感染から守るためには、周囲の人が免疫を十分に持ち、妊婦さんにうつさない環境をつくること、集団免疫を持つことが大切なのです。

 そのくらい大事なワクチンなのですが、実は、昭和54年4月1日以前に生まれた男性には、風しんワクチン接種の機会がありませんでした。つまり、その世代の人たちは、風しんの免疫を持っていない可能性があるのです。現在、40代男性を中心に風しんが流行傾向にあるのは、そのためなのです。

 そこで現在、厚生労働省が、40~50代(昭和37年〜53年度生まれ)の男性に、風しんの抗体検査とワクチン接種の無料クーポン券を発行、郵送しています。皆さんのところにもすでに届いているのではないでしょうか。手順としては、まずは採血による抗体検査を行い、十分な抗体がなかった場合にワクチン接種となります。無料クーポンが利用できるのは令和3年度までです。

 多くの人が行動することで、自身の風しん感染を防ぎながら集団免疫を持つことになり、妊婦さんとその子どもを守ることにもなります。非常に大事なことですので、ぜひこの機会を活用して、まずは抗体検査に足を運んでいただけたらと思います。